2021.12.02 交差穴の裏バリ取りツールを比較してみた【写真&動画解説付】

グローバルセールス&マーケティング部の山口です。
今回は交差穴の裏バリ取り手法について、当社ツールを比較してみました。

交差穴の裏バリ取りは、エッジが3D形状となっているためバリ取りの自動化が難しく、手作業で苦労されている方も多いかと思います。
当社ではこういった交差穴の裏バリを機内で取るツールとして以下がございます。

・セラミックファイバー製のブラシ「XEBECブラシ 内径・交差穴用

・超硬の球状エンドミル「XEBEC 裏バリカッター&パス

それぞれのツールに特徴があるため、実際にどちらのツールを使用すればいいのか選定に迷われる方もいるのではないでしょうか?
そこで、今回は実際に2つのツールを使って加工をしてみることで、特徴をまとめてみました。

 

ブラシとカッターの特長の違い

それではまず、それぞれのツールの特長をまとめてみました。

 

XEBECブラシ 内径・交差穴用

※回転速度が制御でき、かつ6500min-1以上回転可能な装置、回転工具で使用可能
※ツールの挿入は1次加工穴

・セラミックファイバーの研削力を活かし、一般的なブラシでは取り切れないバリも除去できる。
・ブラシならではの柔軟性があるため、寸法精度や位置精度の低いワークにも対応できる。
・バリ取りだけではなく、材質によって内径の研磨(面粗度向上)を行うこともできる。

・1次加工穴に様々なサイズや形状の交差穴が複数空いているでも1つのプログラムですべての交差穴の裏バリを除去できる。
・回転速度を変えるとブラシの広がり径が変わるため、1本のツールで様々なサイズの1次加工穴に対応可能。
・送り速度を変えることで、様々なサイズのバリやエッジに対応できる。
・ツール回転+押し引き動作のみでバリが除去できるので複雑なプログラムが不要。

 

XEBEC 裏バリカッター&パス

※3軸同時制御が可能なマシニングセンタおよび複合旋盤で使用可能
※ツールの挿入は1次 or 2次加工穴

・切削でバリを除去するため、確実にバリを除去できる。
・プログラムは当社が作成するので、プログラムの作成の手間がかからない。
 ※ツールのみの購入も可能です。
・当社が作成したプログラムを使用することでバリ取り後の加工幅を均一に仕上げることができる。
・それぞれの交差穴に応じたプログラムをつくることで一本のツールで様々な交差穴に対応可能。
・一般的なバネ式裏バリ取りツールと比較して約1/5のサイクルタイムで加工が可能。

上記のようにそれぞれのツールは得意な分野が異なっています。

つまり、加工工程や仕上がりの要求値など、使用頂くワークによって適するツールが変ってくるということです。
それぞれのツールの特長をご理解いただければ、皆様のワークに対して最適なツールをご選定いただけると思います。

そこで、今回はこの特徴をより分かりやすくするために、
当社が保有するマシニングセンタを使用して実際にテスト加工を行ってみました。

 

実際に加工してみた

それでは、実際に加工してみたいと思います。
今回使用するワークはこちらです。

材質はSTKM13A、内径はφ24のワークです。
今回はブラシとカッターの特長をより分かりやすくするために、
内径が素材面と切削面のワークを2種類用意しました。

内径素材面×穴あけ加工

まずは内径素材面のワークから検証していきたいと思います。

交差穴の加工から行っていきますが、
今回は円周上に90°ピッチでφ6.9の穴を4ヶ所開けたいと思います!

さて、どんなバリが出ているでしょうか?


  

とても立派なバリが発生していますね。
手作業でバリを除去するのはとても大変そうです。

それでは、実際にブラシとカッターを使ってバリを除去していきましょう。

 

内径素材面×裏バリカッター

まずは裏バリカッターでトライしてみましょう。
加工中の動画も撮影しています。気になる方は是非ご覧ください。

使用ツールと加工条件は以下の通りです。
・ツール:XC-58-A
・S:6000rpm
・F:900mm/min

さて、バリはきれいに取れたでしょうか?

ん?
少しバリが残っているように見えますね。

実はこのワーク、素材面の寸法に多少バラつきがありました。
裏バリカッターは0.1㎜程度の面を取りながら加工していくため、寸法が安定しないと、上手くバリを取ることが出来ません。

今回のワークもエッジにカッターが当たっている部分と当たっていない部分が出てきていますね。

面取り量の取り代を大きくするなど対策方法はありますが、やはり素材寸法がばらついてしまうと切削でバリを取るのは難しくなります。

ちなみにサイクルタイムは4穴で13秒となりました(回転開始や穴ごとの割出、位置決めのアプローチ動作を含んでいます。アプローチを見直すことでサイクルタイムはもっと短縮できます)。
1穴当たりは約3秒なので、少ない穴数であれば短いサイクルタイムでバリ除去が可能ですが、複数穴となると穴間の移動などがあるため、多少サイクルタイムがかかってしまいます。

 

内径素材面×内径用ブラシ

それでは次はブラシでトライしてみましょう!
加工中の動画も撮影しています。気になる方は是非ご覧ください。

使用ツールと加工条件は以下の通りです。
・ツール:CH-A34-15
・S:7000rpm
・F:300m/min
・正逆の2往復

さて、バリはどうなったでしょう。

Before

After

とてもきれいに取れていますね!
セラミックファイバーブラシの高い研削力がうかがえます。

また、ブラシの特長である柔軟性を活かし、ワークの寸法のバラつきは関係なくすべての穴のバリをきれいに取り切ることが出来ました。

また、サイクルタイムは4穴で10秒となりました(回転開始や位置決め、回転停止および逆回転の時間を含んでいます)。
1度に複数穴のバリを除去できるので、穴数が多ければ多いほど1穴当たりの加工時間は短くなります。

XEBECブラシ内径交差穴用は、寸法精度や位置精度が安定しない素材面の交差穴のバリ取りや複数の交差穴のバリ取りと非常に相性がよいことが改めて確認できました!
交差穴のバリ取り、特に素材面や精度が安定しないワーク、1穴に複数の交差穴があいているワークのバリ取りでお困りの方、是非XEBECブラシ内径交差穴用をご検討ください!

さて、それでは次に内径切削面のワークでトライしてみましょう!
まずは穴あけ加工からです。

内径切削面×穴あけ加工

内径切削面のワークに穴あけ加工を行います。

素材面と同様、立派なバリが発生していますね。
内径が素材面と切削面のワークでは発生するバリの様相が少し異なっているのも分かります。

それでは、実際にブラシとカッターを使ってバリを除去していきましょう!

 

内径切削面×内径用ブラシ

内径切削面のワークにブラシを使った結果がこちらです。

先程と同様バリがキレイに取れていますね!
ただし、切削ではないためエッジに面取りをつけることは出来ません。

セラミックファイバーブラシの高い研削力を活かしてエッジを丸めることは出来ますが、図面指示通りの面取りを加工することは難しいです。

それでは次に内径切削面のワークに裏バリカッターを使ってみましょう!

 

内径切削面×裏バリカッター

こちらもきれいにバリが取り切れていますね!

そして、裏バリカッター&パスはエッジの3D形状に倣って加工するため、しっかりと面取りが付いています。
また、当社の裏バリカッターは2次バリを発生しない工夫が施され、加工幅が均一になるような加工経路を算出しています。

一般的な切削ツールのように刃が摩耗してくるとツールを交換すればよいため、管理も非常に簡単です。

 

まとめ

実際の加工の様子を見ていただいたことで、それぞれのツールの特長をご理解いただけたと思います。

ここで改めて、それぞれのツールの特長を表にまとめてみました。
交差穴のバリ取りで、内径交穴用ブラシと裏バリカッター&パスのどちらを選べばよいか迷った際の参考にしていただければ幸いです。

  サイクルタイム ワーク面 エッジ形状の仕上がり ツール挿入方向
1穴 複数穴 切削面 素材面 1次加工穴 2次加工穴
XEBECブラシ内径交差穴用 (※1) ×
XEBEC裏バリカッター&パス (※2) ×

※1 回転速度が制御でき、かつ6500min-1以上回転可能な装置、回転工具で使用可能
※2 3軸同時制御が可能なマシニングセンタおよび複合旋盤で使用可能

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