2021.09.12 研磨材とは?

多くの製品では研磨工程によって、寸法精度の向上や鏡面加工による光沢を生み出しています。
しかし、研磨によって所望の表面を得るためには、研磨材の特徴を知り上手に活用しなければいけません。
この記事では研磨材の性質や種類、使用形態、活用方法などを幅広くお伝えします。

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研磨材とは

研磨材は被研磨(研磨されるもの)を切る、削る、磨くときに使用する細かな粒や粉です。
従来はガーネットやエメリーなどの天然鉱物を使用してきました。しかし、現在では人造の研磨材が主流となっています。

一般的に研磨材は粒や粉のまま使用しません。
これらの砥粒を基材上に接着させた研磨紙や固めた研磨砥石、研磨ルーターのビット、潤滑剤や鉱物油などと混ぜた研磨溶液として扱います。

 

研磨材の結合度

研磨材を固めた砥石の硬さは結合度といいます。
結合度はアルファベットで表され、Aが最も柔らかくZが一番硬いです。
研磨材の硬さを選択する場合は、アルファベットに注意してください。

 

研磨材の粒度

研磨材の粒度は砥粒の大きさです。数字が大きくなるほど細かいことを示しています。
また、砥粒も砥石用の砥粒と研磨紙(サンドペーパーや研磨ベルト)の砥粒とJISにてそれぞれ規定されています。

 

砥石用の砥粒

砥石用の砥粒はJIS R 6001により、粗粒と微粉に分類されています。
粗粒の粒度はF4からF220の26段階です。
微粉はさらに、一般研磨用微粉と精密研磨用微粉に分類されます。
一般研磨用微粉の粒度はF230からF2000の13段階、精密研磨用微粉の粒度は#240から#8000の18段階です。
たとえば、精密研磨用微粉(#8,000)の砥粒の大きさ上限値は6μmと、極めて細かな砥粒になっています。

 

研磨紙用の砥粒

研磨紙用の砥粒はJIS R 6010により定められており、砥粒の大きさで粗粒、微粉に分類分けされています。
(参考)JISR6010:2000 研磨布紙用研磨材の粒度: https://kikakurui.com/r6/R6010-2000-01.html

粗粒はP12から P220までの15種類の粒度、微粉はP240からP2500までの13種類の粒度です。
砥石用の砥粒と同じく数字が大きくなるほど細かな砥粒になっています。
注意すべき点は、粒度の表し方は国によって違うことです。
たとえば、4μmの粒度の研磨紙はJIS規格では#4,000であるもののアメリカ規格では1,200と表されます。
使用する国の研磨紙の規格をしっかりと確かめて、研磨紙の選択ミスを防ぎましょう。
(参考)ハルツォク・ジャパン株式会社/研磨消耗品の豆知識:https://www.h-metallog.com/goods/grind/grind-mame/

 

研磨材の種類

研磨材は人造の研磨材と天然の研磨材があります。
一般的に天然の研磨材は人造の研磨材よりも硬度が低いといわれています。
そのため、現在では人造の研磨材が主として利用されています。

アルミナ

通称アランダムやモランダムともよばれる最も広く知られている研磨材。一般的にA系とよばれます。
主成分がアルミナ(Al2O3)から構成され、その製法によって褐色アルミナ研削材,白色アルミナ研削材,淡紅色アルミナ研削材,解砕形アルミナ研削材,人造エメリー研削材など種類もさまざまです。
アルミナ系の研磨材は研磨微粉の中で最も高い靭性をもっています。
(参考)ナガセ研磨機材株式会社/アルミナ系研磨材:https://www.nagase-kenma.co.jp/product/alumina_abrasive_powder.php

炭化ケイ素

黒色炭化ケイ素研削材と緑色炭化ケイ素研削材との総称。一般的にC系とよばれます。緑色炭化ケイ素は黒色炭化ケイ素よりも高純度です。化学的にも常温で非常に安定しているため、耐薬品性もあります。また、粉砕によって製造されるため、鋭く優れた研磨性も有している研磨材です。
(参考)ナガセ研磨機材株式会社/SiC(炭化ケイ素)系研磨材:https://www.nagase-kenma.co.jp/product/sic_powder.php

ダイヤモンド

人造研磨材も天然研磨材もある最も高度の高い研磨材です。
一般砥粒と区別し窒化ホウ素砥粒と共に超砥粒ともよばれます。
A(アルミナ)系やC(炭化ケイ素)系の砥粒に比べて高硬度で高い熱伝導率をもつため、高い効率で加工できます。
しかし、鉄やコバルト、ニッケルとは高温下で化学反応を起こすため、鉄系の金属用途には向きません。
(参考)機械実用便覧 改訂第7版:http://shop.jsme.or.jp/shopdetail/000000000055/
(参考)株式会社イチグチ/研磨材について:http://www.ichiguchi.co.jp/product/polishing.html

窒化ホウ素

ダイヤモンドに次ぐ高い硬度をもつ研磨材です。
ダイヤモンドと同じくA系、C系よりも高い効率で加工できます。
鉄と反応しない特性をもつため、ダイヤモンドが適さない鉄系の加工に広く使用されています。
(参考)昭和電工株式会社/セラミックス:https://www.sdk.co.jp/rd/pamphlet/ceramics.html
(参考)株式会社グローバルダイヤモンド/CBN(立方晶窒化ホウ素):https://www.global-diamond.co.jp/product/cbn.html

ジルコニア

アルミナ・ジルコニア研磨材として使用されることが多く、Z系ともよばれます。
その割合によってAZ(20)やAZ(40)などの種類があります。A系の砥粒よりも砥粒が欠けやすいです。
しかし、常に新しい刃が生まれるため、鋭い切れ味を長時間保ちます。
(参考)ベルスター研磨材工業株式会社/ジルコニアベルト:http://www.eonet.ne.jp/~bellstar/ZRX.pdf
(参考)理研コランダム株式会社/研磨について:https://www.rikencorundum.co.jp/product/polish/

ざくろ石

ガーネットとよばれるケイ酸塩鉱物です。研磨業界では金剛砂ともよばれ、古くから研磨材として使用されてきました。
現在はざくろ石に代わって人造の研磨材の使用が大半です。

エメリー

エメリーはコランダム(アルミナ)や尖晶石を主成分とする鉱物です。
磁鉄鉱や赤鉄鉱や斜長石を多量に含んだ天然の研磨材です。
とくに、光沢仕上げを必要とするバフ研磨工程に使用されます。
(参考)大分県新木浦鉱山に見出されたエメリー鉱床:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigenchishitsu1951/12/56/12_56_346/_pdf
(参考)株式会社イチグチ/研磨材について:http://www.ichiguchi.co.jp/product/polishing.html

 

研磨材の使用形態

研磨材は用途によって使用形態が異なります。
砥粒として使用するものもあれば、固形にして使用するものまでさまざまです。

研磨紙

研磨紙は基材と接着剤、研磨材で構成されている研磨用のツールです。
基材は紙や布、フィルム上のものがあります。
研磨紙はしわや汚れ、穴、研磨材のムラがあってはいけません。
ほんの少しの傷やムラがあると、被削材の傷として残ってしまいます。
(参考)JISR6251:2006 研磨布:https://kikakurui.com/r6/R6251-2006-01.html

研磨溶液

砥粒に潤滑剤を混ぜたものが研磨溶液です。
たとえば、1μm以下のダイヤモンド砥粒やアルミナを研磨材として使用し、鉱物油や研磨用の潤滑油などを用います。
研磨溶液は被削材に直接かけるよりも、フェルト紙やブラシなどに滴下しての使用が大半です。
研磨溶液の他にも、スプレー缶にダイヤモンド砥粒を封入したダイヤモンドスプレーや砥粒を固形のペーストに混ぜた研磨材があります。
(参考)ハルツォク・ジャパン株式会社/研磨消耗品の豆知識:https://www.h-metallog.com/goods/grind/grind-mame/

研磨砥石

研磨砥石は研磨材を結合剤で固めたものです。
スティック状のものや円柱状、三角錐、球状、などさまざまな形状があります。
そのまま手作業で研磨したり、ルーターに取り付けて使用したりと用途はさまざまです。
また、砥粒ではなく独自のセラミックファイバーによる新たな研磨砥石も開発されています。
弊社では、砥粒ではなく独自のセラミックファイバーを研磨材に使用した砥石を開発しました。
1本のセラミックファイバーに1000個の切れ刃をもつ、切れ味鋭い研磨材です。

・XEBECセラミック砥石:https://www.xebec-tech.com/products_category/stone/

研磨ブラシ

研磨ブラシは研磨材をブラシ型やホイール型、カップ型など、歯ブラシの毛のように敷き詰めたものです。
ブラシの材質は真鍮や砥石入りのナイロンなどの化学繊維が一般的です。
一方で、セラミックファイバーを利用した研磨ブラシもあります。
セラミックファイバーを利用した研磨は、ナイロンブラシの1/6程の面粗さRa=0.1μm程度まで表面を平滑化できる優れた研磨材です。
弊社のXEBECブラシは、独自に開発したセラミックファイバーを研磨材として利用しているため、研磨工程ではナイロンブラシの1/6程の面粗さRa=0.1μmまで表面を平滑化できます。

・XEBECブラシ:https://www.xebec-tech.com/products_category/brush/

 

研磨材の活用方法

研磨材は研磨する材質や表面の状態によって使い分けが必要です。
表面を研磨により平滑化するには、適切な砥粒の材質や被削材の表面に合った粒度の選択が求められます。

研磨材の選び方

研磨材は被削材の硬さで選ぶといいです。
一般的に引張強さの高い被削材はアルミナ(A)系の研磨材、引張強さの低い被削材は炭化ケイ素(C)系の研磨材が適しています。
従来使用している研磨材では効率が低いと感じる方は、研磨材の選定を見直してみると良いかもしれません。
(参考)JISB4051:2014 研削といしの選択指針:https://kikakurui.com/b4/B4051-2014-01.html

粒度の粗いものから細かいものを使用する

研磨は粗い粒度のものから細かい粒度へ順番に進めていきます。
研磨初期から細かい粒子を使用すると、表面研磨には膨大な時間がかかってしまうためです。
粗研磨、中間研磨、仕上げへと研磨工程が移行するたびに、細かな粒度の研磨材を使用します。
たとえば、研磨紙による研磨では粒度を#120、#240、#480のように倍ずつしていくときれいな表面を作れます。
(参考)JISB4051:2014 研削といしの選択指針:https://kikakurui.com/b4/B4051-2014-01.html

研磨ブラシやルーターを用いて平面や曲面、内径の研磨をおこなう

平面研磨には、研磨紙やブラシ形状のビットを用いた研磨が最適です。
研磨紙を用いる場合、下地は高強度で傷がないものを選ぶと平滑な面が形成しやすくなります。

曲面や溝、内径の内側など研磨が難しい箇所は、円柱状のビットや球、三角錐、ブラシ形状のビットを使用しルーターで研磨します。回転運動により、溝だけではなく内径の内側の研磨も可能です。

(参考事例)
https://www.xebec-tech.com/example/0004/
https://www.xebec-tech.com/example/0053/
https://www.xebec-tech.com/example/0060/

 

まとめ

研磨材のバリエーションは多岐にわたります。
研磨材の種類や形状、粒度があるかを知って頂き、その上でご自身が使っている研磨材を見直してみると良いかもしれません。
研磨材の特徴と活用方法を少し知っておくだけで、研磨の出来栄えが今よりも良くなる可能性があります。

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