XEBECマーケティング担当の板橋です。
バリ取りは製造工程のひとつですが、コストとして認識されていないケースも多いようで、「価格の付かない仕事」として見なされてしまっているケースが散見されます。
そこで、私たちはバリ取りにかけているコストの実態について知りたく調査をしてみました。
調査対象は金属加工業でバリ取りに携わる方で、実施時期は2019年5月です。30,000人に調査依頼をして、450件の有効回答が得られました。
この記事が「コスト計算が苦手だ…。」「いつも無料でバリ取りを行っている…。」という方の救いになれればと思っています。
まず、バリ取りのコストを把握している人は大まかにどれくらいいるのか?ということを知りたいと思います。
そこで、手作業でのバリ取りコストを「工具費」と「人件費」の2つに大別できるとして、それぞれが把握されているのがどの程度か?ということを手作業でバリを取っているワークがある方に尋ねてみました。
項目 | 回答数 | 割合 |
工具と人件費を把握している | 57 | 33.3% |
工具費だけ把握している | 8 | 4.7% |
人件費だけ把握している | 36 | 21.1% |
工具費も人件費も把握していない | 70 | 40.9% |
合計 | 171 | 100% |
結果、手作業でバリを取っているワークがある方のうち約4割は、工具費と人件費のどちらも把握していないようです。
つぎに、バリ取りを自動化している方への調査結果です。
自動化でバリ取りをされている方のほとんどがバリ取りのコストを管理されていましたので、では「バリ取りのコストはどのように設定しているのか?」を尋ねてみました。
結果は下記のようになりました。
合計 | 54 | 100% |
設定方法 | 回答数 | 割合 |
原価の〇% | 19 | 35% |
1個あたり〇円 | 18 | 33% |
売値の〇% | 2 | 4% |
その他 | 15 | 28% |
まず、ワーク1個にかけることができる費用は「原価をベースに設定している」というのが多くの方の現状のようです。
「1個あたり〇円」とした18人の、その価格の算定根拠が気になるところですよね。
しかし、そこは企業ごとのロジックのようで、詳細はあまり聞けませんでした。
その他の算定方法としては「削減できる人件費の1割程度」や、「工程にかかる人件費に加え、バリ取り自動化のために用いている設備投資の回収1年程度で計算している」といった意見がありました。
先の設問で「原価の〇%」と回答された方のうち、具体的に数値を教えてくれた方の回答結果が下記です。
設定方法 | 回答数 | 割合 |
原価の1% | 9 | 50% |
原価の2% | 3 | 17% |
原価の3% | 3 | 17% |
原価の5% | 3 | 17% |
原価の10% | 2 | 11% |
合計 | 18 | 100% |
約半数が「原価の1%」で設定されている一方、5%~10%で設定されている方もいます。
バリ取りのコストに関する考え方の幅は広そうです。
同様に、先の設問で「1個あたり〇円」と回答した方の具体的数値を尋ねるとこのような結果になりました。
設定方法 | 回答数 | 割合 |
1円以下 | 10 | 53% |
2円以下 | 2 | 11% |
3円以下 | 1 | 5% |
10円以下 | 4 | 21% |
300円以下 | 2 | 11% |
合計 | 19 | 100% |
「1円以下」が10件となっており、回答のうち半数以上が「1円以下」として設定されていました。
正直、この結果を見て驚きました。
「原価の1%」は、そのモノによりけりなので置いておいて、「1円以下」って、バリ取りコストを安く見積もりすぎている気がします。
そこで、バリ取りのコストを「(1)人件費」「(2)工具費」「(3)機械費」の3種類から成り立つとして考えてみます。
そして、それぞれ「手作業バリ取り」と「自動化バリ取り」のケースで、数字を仮置きしてバリ取りのコスト感を計算してみるとします。
結論、手作業で1個あたりのバリ取りにかかる費用は下記合計より【25.1円程度】だと考えています。
バリ取りを行っている担当者が派遣/パートの方だとして「時給1,500円」として考えます。
ワーク1個あたりのバリ取りにかかる時間を「60秒」として考えます。
この場合、秒給は0.42円なので、1個あたりのバリ取りにかかる人件費は25円(0.42円/秒×工数60秒)となります。
使用する手作業バリ取り工具は1つ「1,000円」で「10,000個分のバリを取ると寿命になる」として考えます。
この場合、1個あたりのバリ取りにかかる工具費は0.1円です。
手作業でのバリ取りですので、機械設備は必要ありませんので0円とします。
結論、自動化で1個あたりのバリ取りにかかる費用は下記合計より【5.9円程度】だと考えています。
自動化なので人件費は「0円」としたいところですが、実際は
・摩耗した工具の補正作業
・寿命が尽きた工具の交換作業
が発生するため、その人件費を考えます。
下記の生産ラインを「時給6000円」の技術者が担当しているとします。
・1か月あたり10,000個の生産数
・1か月あたり352時間の稼働時間(8時間×2交代制22日稼働)
仮に、工具の補正作業や工具交換の作業が1日あたり約10分間(0.17時間)発生した場合、
その作業にかかる1か月の人件費は22,440円(時給6,000円×0.17時間×22日)となります。
1か月10,000個を生産するため、ワーク1個あたりのバリ取りにかかる人件費は約2.2円(22,440円÷10,000個)となります。
使用する自動化バリ取り工具は1つ「10,000円」で「5,000個分のバリを取ると寿命になる」として考えます。
この場合、1個あたりのバリ取りにかかる工具費は2円です。
マシニングセンタの減価償却費を「600円/時間」として考えます。
1個あたりのバリ取りにかかる時間は「10秒」として考えます。
この場合、1個あたりのバリ取りにかかる機械設備費は1.7円です。
先のように、仮にでも計算してみれば分かると思うのですが、人件費や工具費、機械設備費といった項目を踏まえて考えると、バリ取りの多くは「1円/個」 で成しうる工程ではないと思います。
もちろん、「どんな形状のワークのバリ取りを行うのかの前提によって異なる!」「ケースバイケースだ!」とか言われるのは分かるのですが、それでも良いので数字を仮置きしてみてください。「1円/個」で成り立たないことが身に染みて分かります。
まずは、バリ取りのコストを把握しようとすることから改善活動は始まると思います。
そして、バリ取りの自動化を考える際はぜひ弊社までお問い合わせください。
貴社にあったバリ取り自動化を行うための方法をご提案差し上げます。
このブログ記事が、バリ取りのコストを把握し、改善のきっかけになれたら幸いです。
P.S.
記事内で展開した、バリ取りコストの推論を自動でできるアプリを作ってみました。
詳しくは「バリ取りコストを自動計算するアプリを作ってみた」という記事をチェック下さい。
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