研究開発部の新井です。今回は、金型磨きのための指トレーニングについて考えてみました。
金型磨きはミクロン単位の精密作業であり、手先の感覚が作業効率や品質に大きく影響します。
実は、これは金型職人に限らず、ピアニストや外科医、アスリートなど繊細な指の動きを必要とする分野で共通する課題でもあります。
今回ご紹介する内容は、他分野の研究を参考にした私の仮説に基づく提案ですが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
『ニッポンものづくり研究「金型」入門』(幻冬舎, 2019, p152-153)によると、「金型磨き職人は月曜日の午前中の研磨が苦手」という興味深い指摘があります。週末に仕事を離れ、土日で指先の感覚が鈍ってしまうと、月曜日のパフォーマンスに影響が出るのだそうです。
実はこれは金型職人だけの問題ではありません。
ピアニスト、外科医、アスリートなど、精密な指の動きを求められる職業の人々も、指先の感覚が戻るまでに時間がかかることを悩んでいます。
そこで今回は、こうした他分野の研究や知見も踏まえながら、指先の感覚を維持・向上させる方法を検討してみました。
月曜日の朝からベストパフォーマンスを発揮するための指トレーニングの具体例です。
指先の神経を鋭敏に保ち、感覚を呼び覚ますことを目的としています。
目的:指先の血流を良くし、神経を目覚めさせる
• 両手を軽く握ったり開いたりを繰り返す(30秒間)
• 指先を机の上で軽くトントンと叩く(30秒間)
• 親指と各指で交互にタッチしながらスピードを上げる(30秒間)
目的:繊細な感覚を呼び戻す
• 目を閉じて異なる素材(紙、布、金属など)を触り、違いを感じ取る
• 砂粒や米粒を指でつまみ、質感の違いを認識する
目的:金型磨きに必要な指の固定力を向上させる
• 柔らかいスポンジやストレスボールを軽く握り、一定の力で保持する(30秒間)
• 指を砥石に固定する動きを模倣しながら、異なる圧力で押し当てる動作を繰り返す(30秒間)
指先の感覚を司るのは、脳の「体性感覚野」と呼ばれる領域です。
研究によると、定期的に触覚刺激を与えることでこの領域の活性が高まり、感覚の回復が早まることがわかっています。
また、手を動かすことで血流が促進され、指先の動きがスムーズになることも証明されています。
これはスポーツ選手がウォーミングアップを行う原理と同じで、指先の感覚を維持するためには日々のルーティーンが重要ということです。
参考文献
・堀幸平. 『ニッポンものづくり研究 「金型」 入門』 幻冬舎, 2019. p152-153
・共同発表:「目が見えなくなると触覚が鋭敏になる」メカニズムを解明 https://www.jst.go.jp/pr/announce/20230422/index.html
・青木朋子. “複雑な指運動は本当に脳の活動を促すのか?.” デサントスポーツ科学 26 (2005): 42-50.
・田岡三希. “対象物と自己身体の理解につながる体性感覚野の役割.” 心身健康科学 16.1 (2020): 23-28.
私たちは、金型磨きの世界に新しい視点を取り入れ、作業効率を向上させるための研究を続けています。
ぜひインターモールドにて、皆さんの声をお聞かせください!「こんなトレーニングをやっている!」といったアイデアも大歓迎です。
研究開発部の私(新井)が、ブース内に設置する“手作業ツール体験コーナー”で皆さんのお越しをお待ちしております。
金型磨きの技術力向上に向け、一緒にアイデアを交換しましょう。