2020.03.18 大迫傑選手から学ぶ、世界での戦い方

代表の住吉慶彦です。

先日の東京マラソンでは、大迫傑選手が、
自身の持つ日本記録を打ち破り、
2時間5分29秒という新記録で、
五輪代表を手繰り寄せました。
感情を爆発させながらゴールをした大迫選手を見て、
レースにかけていた彼の想いを感じ、感動しました。
特に、自ら五輪代表をつかみ取りに行こうという攻めの姿勢に敬服しました。

そもそも、
東京五輪男子マラソン出場の最後の1枠をかけた戦いは、
3月1日の東京マラソンと8日のびわ湖マラソンに絞られていました。
これら2大会で大迫選手の持つ日本記録2時間5分50秒が破られなければ、
大迫選手が東京五輪内定となる状況でした。
そのような中で、彼がどのようにレースに臨むのか。
それを見たくて、テレビ観戦をしました。

結果はもちろん、レース展開も素晴らしかったです。
スタート時から先頭集団の後方についていた大迫選手でしたが、
20km付近から遅れ始め、一時は13位まで順位を下げました。
しかし、これは、あえて離れたそうで。
「いかにリラックスして自分のペース、リズムを立て直すかということを考えていた」とのことでした。
そして、30km過ぎからペースを上げ始め、一気に5位グループを抜き去り、
最終的には、自分の持つ日本記録を打ち破りゴールしました。
当日の集団のオーバーペースに惑わされず
自分のペースを守った勇気、冷静さに感銘を受けました。

レース後のインタビューでも、

*「42kmの中で追いついて勝てばいい」
*「すべてに対応できる準備はできていた」
*「自分の決断には自信を持っている」

 

という発言が印象に残りました。

冷静なレース展開、周りの状況に流されない勇気を持てたのは、
日ごろの努力・練習の賜物でしょう。
凄い人だなぁ。まさに傑物だなと思いました。

もっと大迫選手のことを知りたいと思ったので、
大迫選手に関するいくつかの記事と、彼の本を読んでみました。

 

◆参照した記事

・大迫傑「強くなるためなら」強い意志力で実力を証明(2018年10月8日)
https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/201810080000208.html

・日本記録更新の大迫傑はシカゴマラソンで日本人らしからぬ走り方だった(2018年10月13日)https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2018/10/13/___split_30/

・大迫傑が分析する成功の秘訣と「オレゴン・プロジェクト」加入の成果(2018年10月14日)https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2018/10/14/___split_31/?utm_content=uzou_1&utm_source=uzou

・大迫傑の日本新記録樹立が示す「日本男子マラソン界の進化」(2020年3月3日)https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/rikujo/2020/03/03/___split_11/

 

◆参照した書籍
「走って、悩んで、見つけたこと」文藝春秋

これらを読んで、
世界に羽ばたきたいと思っている個人も、法人も、
参考になることが多いなと感じました。
大迫選手のコメントを中心に、
世界基準を知る。一流と切磋琢磨する。戦う土俵を決める。徹底的にやる。新しいものを前向きに取り入れる。志を持つ。
という6つの観点でまとめてみました。

 

1)世界基準を知る

 

大迫選手は、ナイキ本社を拠点にトレーニングを行うオレゴン・プロジェクトに加入を許された唯一のアジア人。
加入条件は、“将来、五輪や世界選手権でメダルが取れる可能性のある選手”。
大迫選手は、そんなハイレベルなチームに加入を許される3年前、大学3年生の時に、練習を見学に行っています。そこから練習に対する意識が変わったそうです。
そもそも、オレゴン・プロジェクトを志すきっかけとなったのが、
大学1年生の時に、世界大会で味わった周回遅れという挫折だったようです。

まず、井の中の蛙にならず、世界大会に挑戦したことが、素晴らしい。
世界大会に出なければ、世界との差も感じられず、世界を意識することもなかったでしょう。
そして、世界に一歩でも近づくために、オレゴン・プロジェクトを志し、見学に行くという行動を起こしたこと。
大迫選手に、強い向上心と、自分がコミットしている競技に対する真摯さ、プロ意識を感じます。

 

2)一流と切磋琢磨する

 

「そして、練習生になって、いざ内側に入ったらものすごくシビアな世界だということも分かった。
オレゴンに行ってからは、ライバルというよりも、世界とどう戦っていけるかを考えるようになった。
知らないことから目を背けていたら世界を感じることはできないし、世界との距離は開くばかり。向き合うことの怖さ、知ってしまうことへのこわさはありますが、強くなるためには、目を背けるべきではない。
僕も日本にいたときには、気づけなかったことがたくさんあります。けれども日本から一歩離れた環境に身を置いたことで、幸運にも色々なことに気づけた。」

 

外から見ているだけでは分からないことはたくさんあります。
一流と切磋琢磨できる環境を手に入れたことで、突きつけられる厳しい現実。
その時、逃げるか、立ち向かうか。
世界との違いを知った上で、そこから逃げずに向き合い、食らいついて行ったところに、大迫選手の強さがあり、今があると思います。

「ファラーやゲーレンがなぜ強いのか。その理由が明確にわかる環境にいることが僕の強みだと思っています。『こんなにすごい練習をしているんだ』と、当初はショックを受けたんですけど、現実を突きつけられて、自分もやらなきゃいけないという気持ちになりました。ただ、急にステップアップはできないので、まずは100%やって、その後は100%の基準を少しずつ上げていく。焦らずに、確実に成長することができていると思います。」

 

理想と現実のギャップが大きいと、どうしていいか分からなくなることもあります。
そんなときは、分解してみる。
マイルストーンを設定し、最初のマイルストーンまでは、
自分が行動に移せそうな小さなステップに更に分解する。
そうすると、遥か彼方にあると思われるゴールも、行動した分だけ着実に近づいて来ます。
挑戦には、行動に移すための冷静な戦略性、計画性も大事だということなのでしょう。

 

3)戦う土俵を決める

 

大迫選手は、2016年まで、10,000mでリオ五輪に出場するなど、トラック競技を中心に活躍している選手でした。しかし、トラック競技では、日本で勝てても、世界では勝てないという状況でした。
それが2017年に初マラソンであるボストンマラソンでいきなり3位。
瀬古利彦選手以来30年ぶりの表彰台という結果を出したのです。

「マラソンを走るようになって、僕は自分の思考が変わったと感じています。 トラック競技においてフィジカルが占める割合は約 80%、それがマラソンになるとフィジカルが 60%、メンタルが 40%ぐらいの感覚。メンタルに関しては、自分がコントロールをしようと思えばいくらでもできる。僕はそこに世界と戦える可能性を感じた。
マラソンでは我慢強さや堅実な走りが求められますが、それは日本人にすごく向いているのではないでしょうか」

 

リオ五輪代表に選ばれるほど、トラック競技でも国内では強さを見せていたが、
そのコンフォートゾーンから抜け出し、マラソンに挑戦したことによって見つけた自分の強み。
トラック選手として世界で戦ったり、オレゴン・プロジェクトに参加したりしている中で、
感じたものがあったからではないかと思います。
実際に、大迫選手の戦績を見ると、5,000m、10,000mにおいて、
日本やアジアでは優勝や2位でも、世界選手権や五輪となると20位前後。
トラック競技においては、世界の壁を感じていたのかもしれません。
それが、マラソンに転向したとたんに3位。

大迫傑個人として、世界と伍して戦えるフィールドは?
そして日本人として強みを発揮できる強さとは?
世界一流と切磋琢磨してきた中で自分に問い続けた結果なのではないでしょうか。
我々も、自分たちが、あるいは自分たちの会社が、
評価されるポイントに目を向けると、進むべき道、強化すべき分野が分かるかもしれません。

 

4)徹底的にやる。やり続ける

 

「常に前回やっていた練習と同じぐらい、もしくはそれ以上の練習をこなすこと」

「妥協なくスタートラインにたどり着いただけで、それはひとつの勝利だと思っています。結果が悪かったときでもその感情は変わらないということは、ひとつの収穫でもありました。」

「強くなるというのは、すごく単純なこと。毎回ハードなトレーニングをして、ハードな毎日を過ごす。それを毎日繰り返していくだけ。」

「1本1本、一瞬一瞬が大事。例えば、200mを20本走るとする。このとき20本走ると考えるのではなく、この1本、この200mをどう走るか。」

 

あの人は、才能があるからとか、チャンスに恵まれていたから、という言葉はよく聞きます。
もちろん、それも否定できないでしょう。
しかし、才能と運だけで、勝ち続けることができるでしょうか?
会社は、価値を提供し続けられるでしょうか?
基本は、誰よりも努力し、そしてそれを続けることが必要。
真実は、シンプルなのです。
一流とそうでない人は、同じことをやっても取り組み度合いが違うということですね。

 

5)新しいものに前向き

 

今では、長距離レースの主役となっているナイキの厚底シューズですが、
最初にレースでお目見えした2017年には、奇異な存在でした。
なぜなら、他のシューズメーカーは、皆、薄く、軽くという方向の開発をしていたからです。
そんな中で、大迫選手は、日本人ではいち早くナイキの厚底シューズを導入。
マラソンでは2017年4月のボストンから着用しています。
今回の東京マラソンでは、従来モデルよりも超厚底になった最新モデル(発売前)を採用した選手は少なかった。
ナイキに所属している大迫選手ですら、そのシューズを履いたのはレースの3週間ほど前だったという。
それでも、大迫選手は、迷わず、慣れてもない、実績のない最新モデルを選んでいます。

技術は進歩しています。
一方で、人間には、慣れ親しんだ物や環境(コンフォートゾーン)に安心感を覚えるという特性があります。
どうしても、コンフォートゾーンの中にいたくなる気持ちも分かりますが、
実は、コンフォートゾーンから一歩出たときに、一番成長できるという心理学的法則「ヤーキーズ・ドットソン の法則」があります。
我々はある程度のストレスを感じていたほうが、
ストレスがまったくない状態よりも作業の効率が上がるというものです。
コンフォートゾーンに留まりたいという、人間の性に逆らって、
勇気を持って、新しいものを試す人に、
新しい未来がいち早く開けるのではないかと思いました。

 

6)志を持つ

 

大迫選手は今回の東京マラソンで新しい日本記録を樹立したことで、
褒賞金1億円を手にしました。1億円の使い道について、聞かれると、

「自分自身のためにというよりも、これから育っていく選手のために使っていくこともあるのかなと考えています」

「まだお出しできる情報は少ないですけど、強いコンセプトとしては、日本人が世界との差を縮めるためというのが軸になっています。あとは、新しい競技の見せ方。選手ファーストでありながら、オーディエンスも盛り上がって、見ていて楽しいというか、ワクワクするようなイベントにしたいと思っています」

 

とのこと。

私利私欲だけでは皆から支持されません。
支持されるために志のようなものを示す人も、後から化けの皮が剥がれます。
自分一人の願望を越えた志を持つ人に、支持が集まり、それが結果として、
多くの人に新たな価値を還元してゆく流れを作り出してゆくのだと思います。

 

速く走ることを究めようとしている大迫選手の行動や考えには、
我々が成長し世界に羽ばたくためのヒントがたくさんあるように思います。

私個人としても、ジーベックという会社としても、
大迫選手のように、
自分たちの目指すものに真摯に向き合い、
日々努力し続けたいと改めて心に誓いました。

そして、実績のない最新モデルを採用するときに、
「ナイキを信用して、履いてみようと思いました」
と大迫選手が思ったように、

当社が皆さんにとって、
大迫選手にとってのナイキのような存在になれるように、
新しい技術、商品やサービスを開発してゆきたいです。

 

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