2022.02.28 切削油(クーラント液)とは

「切削油とは?」という基本的な内容から、役割や使用上の注意点まで詳しく解説します。

目次
1.切削油(クーラント液)とは
2.切削油(クーラント液)の役割
3.切削油(クーラント液)の種類
4.切削油(クーラント液)の供給方法
5.切削油(クーラント液)を使用する際の注意点
6.まとめ

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1. 切削油(クーラント液)とは

切削油は、金属素材の切削加工に用いる潤滑油です。
潤滑や洗浄などの役割を担い、切削加工の精度を上げるために用いられます。
また、切削加工時に生じる熱を抑える役割もあることから、「クーラント液」と呼ばれることもあります。

 

2.切削油(クーラント液)の役割

切削油は金属素材の僅かな隙間や凹凸へと浸透し、以下のような役割を果たします。

• ①潤滑
• ②冷却
• ③洗浄
• ④防錆

それぞれ詳しく解説します。

 

①潤滑

切削油は工具と金属素材の間に生じる摩擦を軽減します。摩擦が軽減されることで、以下のようなメリットが生まれます。

• 工具の寿命増加
• 加工精度の向上

②冷却

切削油は、工具と金属素材の間に生じる熱の冷却も担います。
切削加工において、工具と金属素材の間には600℃にも及ぶ熱が生じます。
熱は金属を変形させるため、加工精度低下の原因です。
そこで切削油をかけながら加工を行い、熱を冷却することが求められます。

③洗浄

切削油には、切削加工で生じる切屑を洗い流す効果もあります。また切削油の粘性により、切屑の飛散も防げます。
切屑は加工精度を低下させる原因の一つなので、切削油で適宜洗浄を行うことが重要です。

④防錆

実は切削油には、工具や金属素材に対する防錆の効果もあります。
切削油が膜の役割を果たし、空気による酸化を防いでくれるからです。
切削油を使って加工を行うことが、結果的に工具の寿命延長にもつながります。

 

3.切削油(クーラント液)の種類

切削油は、主に以下の2種類に大別されます。

• 不水溶性
• 水溶性

それぞれ特徴や用途について解説していきます。

 

①不水溶性

不水溶性とは、切削油の主成分が油であることを意味します。
潤滑効果に優れ、精度を求める加工に主に用いられます。また水溶性に比べ、劣化しにくいのも特徴です。
ただし主成分が油であるため、引火のリスクが一定数存在します。
無人運転の工作機械に用いる際は、十分な安全管理が必要です。
なお不水溶性の切削油は、JIS規格に基づくとさらに細かく分類されます。

N1種 鉱油及び/又は脂肪油からなり、極圧添加剤を含まないもの。1号~4号に細分する。
N2種 鉱油及び/又は脂肪油からなり、極圧添加剤を含むもので、かつ、銅板腐食が150℃で1以下のもの。1号~4号に細分する。
N3種 鉱油及び/又は脂肪油からなり、硫黄系極圧添加剤を含むもので、かつ、銅板腐食 が100℃で2以下,及び150℃で2以上のもの。1号~8号に細分する。
N4種 鉱油及び/又は脂肪油からなり、硫黄系極圧添加剤を含むもので、かつ、銅板腐食が100℃で3以上のもの。1号~8号に細分する。

(引用:JIS K 2241「不水溶性切削油剤の種類及び性状」)

使用時の切削条件および工具・金属の素材に応じ、適切なものを選定する必要があります。

 

②水溶性

水溶性の切削油は、水と油が混ざっています。主に冷却の用途で用いられ、引火のリスクが低いため無人運転の工作機械でも利用しやすいです。
ただし不水溶性と比べて劣化が早いため、管理面の大変さがネックとなることがあります。
なお、主な用途が冷却であることから、水溶性の切削油を「クーラント液」と呼ぶケースが多いです。

 

4.切削油(クーラント液)の供給方法

切削油の供給方法には、主に以下の2種類があります。

• 外部給油方式
• 内部給油方式

それぞれ詳しく解説していきます。

 

①外部給油方式

外部給油方式とは、その名の通り外部の装置から切削油を供給する方法です。
具体的には、「クーラントホース」と呼ばれるホースを用い、加工点へと供給を実施します。
クーラントホースは自由に曲がりやすく、手動での位置調整が可能です。

②内部給油方式

内部給油方式とは、工作機械の主軸や工具内部から切削油を供給する方法です。
主軸や工具に設けた供給口から、切削油を噴射します。
内部給油方式の特徴は、外部給油方式よりも高圧で切削油を噴射できる点です。
そのため、深い穴や溝に対しても切削油が届きます。

 

5.切削油(クーラント液)を使用する際の注意点

切削油は製造現場で日常的に使用されているツールですが、使い方によっては危険性もあります。
切削油を使用する際は、以下に注意しましょう。

• 周囲に飛散させない
• 皮膚に付着させない
• 目や鼻に入れない
• 発火させない
• 日常管理を怠らない

それぞれ詳しく解説していきます。

 

①周囲に飛散させない

切削油が床に飛散すると、床がツルツルと滑りやすくなり、最悪の場合は転倒などの労災事故につながる恐れがあります。また、切削油の付着による製品や設備の汚染にもつながります。
切削油を飛散させないための設備設計、および定期的な清掃は欠かせません。

②皮膚に付着させない

切削油が皮膚に付着すると、かぶれが生じる恐れがあります。
切削油によるかぶれは、露出していない皮膚に対しても起こり得ます。
なぜなら、作業着などに切削油が染み込むケースがあるからです。

対策としては、刺激の少ない石鹸で手や顔をこまめに洗うことを心掛けましょう。
また、作業着などの衣類は毎日洗い、清潔に保っておくことも重要です。

③目や鼻に入れない

切削油が目に入ると、炎症を起こす恐れがあります。また気化した切削油を吸い込むと、体調不良を招くケースも。
切削油を扱う作業者は、保護メガネやマスクの着用を徹底しましょう。

④発火させない

特に不水溶性の切削油は、取り扱いを間違えると発火のリスクがあります。
発火のリスクをケアするために、以下を実施することが重要です。

• 各種管理機能を搭載する
• 切削油を確実に加工点に届ける
• 余裕を持った切削条件を設定する
• 切削油の残量を管理する

上記を守り、切削油を安全に運用しましょう。

⑤日常管理を怠らない

切削油は、放置しておくと劣化が進みます。
劣化の主な原因は時間経過、および切屑や異物の混入です。
劣化した切削油は本来の性能を発揮できないため、以下のポイントを日々チェックしましょう。

外観 変色の発生や異物の浮上がないかを目視で確認する。
臭い 悪臭が発生していないかを確認する。バクテリアの繁殖が進むと、悪臭が発生しやすい。
濃度・Ph 切削油ごとに定められた濃度・Phから外れていないかを確認する。

 

6.まとめ

切削油とは、金属素材の切削加工に用いる潤滑油のことです。
主に、以下の4つの役割を果たします。

• 潤滑
• 冷却
• 洗浄
• 防錆

切削油を正しく使えば、加工精度の向上や工具の寿命延長にもつながります。

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