2021.08.12 糸面取りとは?

面取りには、C面取り、R面取り、糸面取りなどの種類があります。
糸面取りとは、エッジ部のバリを落とすだけの、ほんのちょっとの面取りのことを言います。
細かい寸法指示をせず、バリを落とすだけの処理である為、経済的です。
一方で、指示が曖昧であることから、設計者の指示と実際の仕上がりに差が生じるといった問題が起こる可能性もあります。

※「面取り」全般に関しては、こちらにまとめてあります。

面取りとは

 

糸面取りの意図と指示方法

工業製品の設計図面では、形状を一義的に示すことが求められます。
従って面取りの指示においても、C面取り、R面取りでは、形状とその大きさが図示されます。

 C3.0 => 形状=45度の面取り、  サイズ=エッジ部頂点から3mmの点でカット
 R3.0 => 形状=円弧形状の面取り、 サイズ=その円弧の半径は3mm

しかし、糸面取りの場合、寸法が図示されません。これはどういうことでしょうか?

設計する側から。
糸面取りの意図を明確な文章にすると以下のようになります。

・バリによる問題が発生しないように仕上げてください。
・ただし、図示した形状と異なるレベルの加工は加えないで下さい。

実際は、R0.2~0.3、もしくはC0.2~0.3程度の処理がされるのが一般的ですが、タービンのような大きな製品ではもう少し大きなC面取り(もしくはR面取り)になることもあります。
つまり、面取りの寸法(面取りの大きさ)が具体的に規定されていないということになります。

また、『面取り』をそのまま解釈すると、C面取りになりますが、けがをしないようにエッジを取るだけであれば、C面にこだわる必要はありません。
実際に、やすりを使って手で仕上げる場合、Rに近い形状で仕上がっている場合もあります。
これらのように『糸面取り』と指示しても、形状や大きさいについて、設計者と製造者で意見の食い違いが出てきてもおかしくない状況にあります。

では、糸面取りの部分に関し、C0.2~0.3と明確に設計図面に記載したらどうなるでしょうか。
製造者は図面寸法を厳守する必要があるため、C0.25を狙って精度の高い加工を行う必要があります。
精度の高い加工をするのは手間とコストがかかります。
それだけでなく、加工後の形状が図面要求通りになっているか検査も必要です。
C0.2~0.3に入っているかどうかの検査はサイズの小ささから、やはり手間とコストがかかります。

すなわち、糸面取りの指示とは、『緻密な管理は不要だけれども、バリが無い様にすること』という意味です。
実際、糸面取りという言葉を用いず、図面の注記に『各エッジ部にバリ無き事』と表記される場合も多いです。

さて、曖昧さを含み、設計者の意図を汲んだ仕上げを実施することになる糸面取りは、極めて日本的なものづくりの慣習のようにも感じますが、海外ではどのように扱っているのでしょうか?

 

海外における糸面取り

糸面取りに対応する英語はなく、『バリ無き事』のように図面に記載されます。
ちなみに、バリ自体は英語で、burrと呼ばれます。実は日本語の『バリ』は、この英語の『Burr』が語源です。
日本では1950年頃まで『バリ』の事を、『カエリ』と呼んでいましたが、 欧米の技術を導入し高度成長を果たす中で『バリ』という言葉が定着しました。

英語の図面では、以下のような注記が実際に使われています。

日本語図面表記 英語図面表記
バリなきこと Must be free from burrs.
角部はバリなきこと Corners to be burr-free
この部品にはバリなきこと Burrs are not allowed in this part

 

このような図面表記は海外でも一般的であり、意味を誤解されることはありません。
しかし、調達を海外に変更するケースなどでは、糸面取りの指示には曖昧さが含まれていることを理解して運用する必要があります。
図面に参考寸法を記載する、海外調達先でのバリ取りの処理の方法を問い合わせる、など気を配る必要があります。
特にコストダウンを目的に新興国に調達を変更する際、最初のタイミングでは糸面取りの指示をやめ厳格に小さなC面の寸法指示に変更した方がよい場合もあります。

 

糸面取りの加工方法

糸面取りの加工方法は多様です。
各生産者が一番生産性の良い方法を選択します。
精密部品であれば、マシニングセンターの部品加工のプログラムにバリ取り(ごく小さいC面取り)のプログラムを追加で組み込むことが多いです。
加工時間が伸びますが精度良く管理された面取りになり、追加の工程が不要となります。
サイズが大きい部品では、フライス盤などの加工機械で、きちんと部材を固定し、角の辺がC面取りになるように調整し加工する場合があります。
面取りだけを追加で加工する工程となる場合も多いです。
サイズが大きく、数量が多い場合、総合的にみて生産性が高くなります。
数量が少ない場合や、形状が複雑でフライス盤での面取りが面倒な場合は、手作業でやすりがけをする場合もあります。
また、バリ取り専用のブラシやバリ取り専用機など多様な処理方法が開発されています。

 

金属切削加工の日本と海外の違い

コストダウンを目的に、中国・ベトナムなどのアジア圏に部品加工を依頼する、調達を変更するといったケースが増えてきました。しかし、加工された部品は日本人技術者が作ったものと比べ粗が目立つことがあります。
これは日本人技術者との経験の差によることが主な原因です。

ものづくり大国と言われた日本の技術者は三角図法で描かれた紙の図面から、実際の3次元形状を認識する能力に優れていて、かつ設計者の意図を読み取り、高い品質で仕上げることに長けています。
しかし、中国・ベトナムなどのアジア圏のものづくりでは、日本人技術者のように2次元図面を上手く扱えない場合も多く、3D-CADによるモデル設計とCAD-CAMによる加工プログラム作成によって機械加工産業が急激に成長してきた背景があります。
3Dモデルの設計では、C面取りやR面取りは形状にきちんと反映されます。
しかし糸面取りについては、3Dモデルにその形状を反映しません。
このことは、加工先によって糸面取りの仕上がり状態が大きく変わる一因となりますので注意が必要です。

 

まとめ

図面の記載方法はISO規定で国際的にも共通化が図られてきていますが、糸面取り(バリなきこと)については形状や寸法が具体的に示されない図面指示になります。
この特質をよく理解して扱い、より適切な製品設計・製造を心がけたいですね。

バリ取り自動化のご相談はこちら

記事一覧