XEBECマーケティングチームの板橋です。「バリなきこと」について調査しましたので公開します。
バリは残っていることで、様々なトラブルが発生します。その多くは品質に関するものです。
バリがあることで部品を正確に組み付けることができなかったり、期待する性能が発揮されなかったり、脱落して誤作動の原因になることがあります。また、バリがあることで、工作物に触れる作業者に危害が及ぶ原因になります。
そのため、ほとんどの場合、「バリは取らなければならないもの」とされていますが、図面には、大抵「バリなきこと」と記載されています。
しかし、具体的なバリの除去方法や、その寸法などを指示するわけではなく、その図面指示が曖昧であるために、苦労している方は多そうです。
たとえば、発注元の部品メーカーが許容するバリの基準が不明なまま部品が出来上がったとします。そこで何か問題が発生し、その原因がバリに在った際、「バリなきこと」と書いた設計は圧倒的に弱く、責任の所在はバリ取りを担当した者になってしまうことも多いと聞きます。
私たちは金属加工に携わる30,000人の方を対象にバリに関する調査を実施し、453人の有効回答をもとに「バリなきこと」の基準を考えました。(2018年5月 / 調査実施)
まず、調査の結果をもとに、各企業が「バリなきこと」と部品メーカーから注文を受けた際に、「バリを除去できたと判断する基準」は下記となっているようでした。
合計 | 453 | 100% |
選択肢 | 回答数 | 割合 |
①目視でバリを確認し、目に見えるバリが無ければOK | 74 | 16% |
②バリを触ってみて、感じられるバリが無ければOK | 275 | 61% |
③上記以外で何らかの測定を行い、規定値以下になればOK | 72 | 16% |
④機能的に有害性がなければバリを取らなくてOK | 11 | 2% |
⑤その他の方法で判断 | 21 | 5% |
「バリなきこと」という図面指示において、具体的な数値を指定されないことがほとんどであるため、目視もしくは触ることのみでバリの有無を判断しているケースもまた77%にものぼり、バリを数値管理しているユーザーは少ない状況です。
一方で、何らかの方法でバリ測定を行っている企業のうち66%の企業はデジタルマイクロスコープや精密測定顕微鏡などといった拡大鏡の倍率による判定法を採用しているようでした。
同様の対象に、納品先から「バリの取り直し」を依頼された場合、具体的な手法や目標値の指定がされているかどうか?を質問した際には下記の結果となりました。
合計 | 150 | 100% |
選択肢 | 回答数 | 割合 |
具体的な規定値の指定がされる | 30 | 20% |
具体的な規定値の指定はされない | 120 | 80% |
「バリの取り直し」の依頼の際にも、規定値は指定されずに曖昧な戻しがされることがほとんどのようです。
同様の対象に、「『バリなきこと』が達成できる基準を、大まかで良いので教えて下さい」という質問をしたところ、「0.1c程度」や「0.05mm程度」といったあらゆる回答がありました。
その数値を大まかに括り、その平均値を取ると「バリなきこと」が達成できる基準は「バリの高さ0.048mm」というのが現状認識のようでした。
上記の結果を下記の3グループに分類してみました。
(A)バリの取り直しを経験したことがないグループ
(B)バリの取り直しを経験しているが1年以内に再発させたことがないグループ
(C)1年以内にバリの取り直しを経験しているグループ
そして、それぞれの『バリなきこと』が達成できる基準数値の平均値を取ってみました。
すると、以下の結果でした。
グループ | 「バリなきこと」の基準値 |
(A)バリの取り直しを経験したことがないグループ | バリの高さ 0.057mm |
(B)バリの取り直しを経験しているが1年以内に再発させたことがないグループ | バリの高さ 0.029mm |
(C)1年以内にバリの取り直しを経験しているグループ | バリの高さ 0.055mm |
これを見ると、バリの取り直しを経験し、基準を厳しめに設定し直したと思われる(B)群は、他に比べて厳しい数値基準となっていることが分かります。
このことを考えると、全体平均値の0.048mm程度だと、バリの取り直しがあったりなかったりするため、それより少し厳しめの0.03mm以下程度に基準を作るのが望ましいのかもしれません。
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