2020.10.27 シーメンスNCから気づいた日本人の特異性

代表の住吉慶彦です。

当社は、岡崎の開発拠点に、4台の工作機械を置いています。
すべて、開発のためです。
3軸、5軸、複合機など、なるべくお客さんの使用環境に近いマシンを導入し、
開発中のツールのデータ取り等に使用しています。

一番最近導入したのが、シーメンスNCの5軸マシニングセンターです。
2台目の5軸マシニングセンターになります。
1台目はファナックNCのもの。
当社は国内だけでなく、海外のお客さんも多く、
しかも自動車以外の用途も拡大しているので、異分野の開拓のためにも、
また、欧州のものづくりの思想を感じるためにも、導入しました。

日本では、ファナックNCがほとんどなので、導入の際には、
当社のエンジニアも、慣れるのに、しばらくかかったようでした。

落ち着いたころに「ファナックとシーメンスの違いってどんなところで感じる?」
と質問したところ、こんな答えが返ってきました。
「原点出しの仕方ですね。」
ほう、それ、詳しく聞かせて、とお願いしたところ、懇切丁寧に様々なことを教えてくれました。

まとめるとこんな感じ。

  ファナックNC シーメンスNC
メリット

・各加工面単独での補正ができる。
・熱変位などが起きても各面でその変位を補正すればよい。

・測定する原点が1つ。
・管理する原点が1つ。
・補正する原点が1つ。

デメリット

・測定する工数が増える(割出し面が多ければ多いほど工数が増える)
・管理する原点が増える(割出し面が多ければ多いほど管理する原点が増える)
・3次元(面と面の関係性)を考え尽くした補正をしなければならない。

・熱変位などで基準原点の位置が変化すると、自動計算の結果が変わり、各面の位置関係がずれる。

(※間違えていたら教えてください)

 

つまり、ファナックNCは、優秀な現場が、
しっかりと1面ずつ原点出しをすることを前提にしています。

一方で、シーメンスNCは、
現場は、複数回原点出しなんてしないだろう前提。
欧州の人は仕事を早く終わらせて帰りたいですしね。

努力を最小限にして、出来るだけ機械にやらせてしまおうという考え方かもしれません。
いずれにしても、工程集約的考え方をする欧州と、工程分割の日本の違いが如実に出ています。

感じたことは、日本発のシステムは、
丁寧で粘り強い現場が前提となっているのではないかということです。

日本にいると、日本人の特異性は分かりにくいですが、海外の人からは分かりやすい。
海外の方がどのように感じているか。

これらを見ると、勤勉さ、礼儀正しさ。几帳面さや正確性へのこだわり等が、
特筆すべき日本人の良さとして認識されています。

The 6 Things We Love Most About Japan
https://boutiquejapan.com/best-things-about-japan/

熱い米国人ブログに見る日本の素晴らしさの再発見
https://www.advertimes.com/20120322/article59347/

 

そう考えると、
日本には、日本人の几帳面さや正確性へのこだわりを前提としたシステムが多々ありそうです。

たとえば、電車。
時間に正確な日本の電車素晴らしいですね。
ちょっと遅れただけで、「大変申し訳ありません」という放送が流れます。
時間通り来ることが前提だから。
それが当たり前だから、路線検索が可能となります。
海外の人たちも、その緻密な交通機関に感銘を受けるようです。

そんな素晴らしい日本の電車や運行システム。
日本人の気質だからこそ生まれたようなものなので、
世界にどんどんPRして輸出すればいいのに。と思っていました。

あるとき、鉄道関係の方にお会いしたので、
日本の電車やシステムは、さぞかし世界で引っ張りだこでしょう?と聞いたら、
なんと。
全然売れないらしいです。

なぜなら、
時間通り到着するためには、精密な制御をしないといけない。
その為に、多くのセンサーと精密な部品、そのためのシステムが必要になる。
だから日本の車両は高くなる。
また、仮に高い車両を導入しても、日本人同様に緻密に運用できないと宝の持ち腐れになる。
だから、他国では導入しづらいそうです。

更に、電車の到着時刻の正確性に対する市場の要求度合いも違う。
日本以外の多くの国では、電車なんて遅れるのが当たり前。
だから、路線検索のようなものは成り立たないし、
きっちり時間通りに到着させることが前提の運用システムも
オーバースペックで、結果、世界でニーズはあまりないようです。
日本すごいけど、俺達には真似できないよね。ってことだと思います。

日本人だからこその製品・システムは、昔からありそうです。
数年前に、「永遠のゼロ」という
第二次世界大戦を舞台にした百田尚樹さんの小説で読みました。
その中に、ゼロ戦の話が出てきました。

ゼロ戦が、徹底的に軽量化されているのは、長い航続距離で、奇襲をかけるため。
その作戦は、パイロットが長時間(時には10時間以上)集中して、
飛行機を操縦することが前提となっています。

勤勉で粘り強い日本人だからこその発想ですね。
しかし、軽量化を追求するために、操縦席を守る機能がなく、
被弾すると100%操縦士は死んでしまう。
そして命中率10%の特攻なんて行うもんだから、機体も熟練パイロットも同時に失ってゆく。
責任はシステムではなく、操縦する人間の側に持たせているのです。
キツいですね。

一方で、米国の爆撃機は、人は疲れるものだ、ミスするものだという考え方。
そのため、人の努力に頼らないシステムになっています。

機体は作ればいいが、人命は変えられない。
怪我をしたパイロットは、傷が癒えればまた活躍できるという考えの下、
被弾しても、まずは操縦士を守れるように、操縦席は分厚い鉄板で覆われています。
責任は、人間ではなく、システム側が負っています。
操縦する側にとっては楽なシステムです。

このように、日本と米国では、戦闘機の設計思想が違うから、結果、構造やシステムが違ってくる。
ゼロ戦は、確かに日本人の特異性を生かしていますが、かなり危ういシステムです。
人間は疲れるし、個体差もあるのに、Maxの力を出したときを基準にしています。
一番まずい状態のときでも、それなりの品質で仕事が出来るようにすることが、
安定的なシステムの基本ですよね。

ゼロ戦は、画期的な戦闘機でした。
しかし、日本人でないと扱えないので、仮に他国にPRしていたとしても、
売れなかったことは想像できます。
日本の戦闘機すごいね。でも、俺達には、無理。ってね。

我々は、自分たちの強みを認識すると同時に、
その強みが裏目にでることを知っておかなければならないと思います。

日本市場を基準に企画したり、ものづくりをしていると、
日本人でないと活用できないものになっている可能性があることを知っておくということ。
日本から世界へ打って出ようとすると、そんな壁に当たる可能性があります。
多くの人はそれほど粘り強くないから。
人のエネルギーには、限界があります。
だから、我々の強みは、システムに組み込んではいけないのでしょう。

特異性をデフォルトにするのではなく、+αの付加価値として提供できるようにすること。
プラスアルファのサービスとしてマネタイズしないといけないのではないかと思います。

また、人には、仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する(パーキンソンの法則)という習性があります。
つまり、締切が決まっていないと、どんどん仕事が複雑になる。

欧州人は、早く帰って、休みを長くとるイメージありますが、
時間を区切っているからこそ、休みを取りたいからこそ、仕事をシンプルにしようとする思考になり、
その分、引継ぎも容易で、生産性が高いのではないでしょうか。

今、世界中で、製造現場における就労者数の減少が大きな危機感となっております。
そして、日本人もだんだん粘り強くなくなってきていますし、
スキルも低下していると言われております。
そのような中で、
最近各メーカーからリリースされる新製品、新機種は「ワンタッチで○○できる」というようなものが多くなっております。

当社も、同様です。
貴重な人材には、エネルギーのかけ甲斐のある分野に集中してもらえるように、XEBECで巻き取れることは巻き取ってしまおうという考え方で開発を進めています。
当社は、幸い、世界中の様々な分野の生産ラインで採用して頂いておりますので、樹脂から難削材まで、様々なバリについての情報、加工データが蓄積されております。
このビッグデータを活用した商品・サービスを提供し、ユーザーの現場での手間・時間を削減できるようにしたいと考えております。

その象徴的なものが、XEBECカッター用のパスです。
有能な方であれば、パスを生成することは可能です。
出来るか出来ないかと言えば、出来る。
しかし、それにどのくらいの時間がかかるでしょうか?
その方は、その仕事にかかりっきりになれるだろうか?
出来るとやるは違う。
スピードを求められる今の時代、出来ることはやる。のではなく。
やる価値があることをやり、出来ることでもスピードを上げるために、外部を活用する。
出来ることでもやらないこともある。という方向にシフトしないといけない。

スイスのビジネススクールIMDから毎年発表される世界各国の競争力に関するデータ。
2020年、日本のビジネスアジリティ(知覚するスピード、意思決定スピード、実行スピード))分野は、63か国中56位と低レベルであることも、上記の裏付けではないでしょうか。

2020年の日本の「ロボット産業」のシェアでは2位と健闘しているが、「ビジネス・アジリティ」は世界56位。

The IMD World Digital Competitiveness Ranking 2020 results
https://www.imd.org/wcc/world-competitiveness-center-rankings/world-digital-competitiveness-rankings-2020

 

日本は、今のまま、“出来るならやる。がんばる。”という努力に頼るやり方をしていると、
事業展開のスピードで、完全に世界から置いてゆかれてしまいます。

XEBECのサービスを活用して、本来時間とエネルギーを注ぐべき、分野に集中的に資源投資してはいかがでしょうか?

 

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