
こんにちは、研究開発部の新井です。
「背中のかゆいところに手が届かない」。
あのもどかしさ、誰もが一度は経験したことがあるでしょう。
実は、金属加工のバリ取り現場でも似たような「かゆみ」があります。
それが深穴の交差穴に残るバリです。アプローチが難しく、一般的な工具では届かないこともあります。
そんな届かないバリに、「孫の手」のように「かゆいところに手が届く」ツールがあります。
それは、XEBECストーン 弾性シャフトタイプ(以下、弾性シャフトタイプ)です。
孫の手は、背中のように手が届かない場所をかくための道具です。
細長い棒の先が手の形をしており、それを用いてかくことで、自分の手で届かない背中のかゆみをスッと解消してくれます。
これはまさに「かゆいところに手が届く」 状態そのものです。
孫の手の本質を抽象化すると、「届かない小さな不快を取り除くためのツール」です。
背中のかゆみが気になるように、深穴の交差穴の奥に残るバリもまた、小さいのに放置できない不快といえるでしょう。
そんな不快を取り除くのに弾性シャフトタイプは有効なのです。

弾性シャフトタイプは、リューターのような回転工具に装着して使用するバリ取り用の先端工具です。
最大の特徴は、シャフト部分にばね鋼を採用していることです。
これにより、工作物への当たりが柔らかく、加工時のビビリを抑制できます。

そして、もう一つの特徴が、工具の長さです。
実は一般的な軸付砥石より工具の全長が長くなっています。この長さこそが、深穴の交差穴のような部分にあるバリ取りにおいて大きな威力を発揮します。
同じ形状の砥石を持つ一般的な軸付砥石と比較してみましょう。
| 製品 | 砥石径 (mm) | 全長 (mm) |
|---|---|---|
| A社 軸付砥石 | 10 | 50 |
| XEBECストーン 弾性シャフトタイプ CH-PM-10B |
10 | 75 |
| XEBECストーン 弾性シャフトタイプ CH-PM-10B-L |
10 | 155 |

このように、一般的な軸付砥石と比べて弾性シャフトタイプは約1.5~3倍の長さがあります。
つまり、弾性シャフトタイプを使用することで、これまで届かなかった交差穴まで確実にアプローチできるのです。
なぜ一般的な軸付砥石は短いのでしょう。理由の一つは、操作のしやすさを重視しているためです。
リューターを用いて軸付砥石を操作するとき、
・作用点=軸付砥石がワークと接触して加工が行われる位置
・力点=作業者の手がリューター本体を保持して操作している位置
・支点=親指とリューターの接触点または手首のように操作時に固定される位置
とすると、作用点・力点・支点は第3のてこの位置関係になっています。

第3のてこの場合、短い工具では力点と作用点の間隔が短くなり、小さな力の加減や角度調整がしやすく、繊細なコントロールができます。
一方で、長い工具では力点と作用点の距離が長くなり、手元でのわずかなぶれや角度変化が工具先端で大きく誇張されてしまいます。
すなわち、バリ取りの際に加工面への砥石の当たりが不均一になり、仕上がりにムラが出やすいという問題が起こりやすくなります。

弾性シャフトタイプがユニークなのは、長い工具であるにもかかわらず、仕上がりが安定する点にあります。
弾性シャフトタイプは、シャフト部分にばね鋼を採用しているため、通常の長い工具で発生しがちな、手元のぶれの誇張による加工負荷の変化を、シャフトのしなりが吸収してくれます。これにより、砥石がワークに当たる力が急激に変化せず、結果として接触圧が平均化されます。したがって、加工面の仕上がりが安定し、ムラも大幅に出にくくなります。

さらに、シャフトが細いため、奥の加工箇所まで視界が開けるというメリットもあります。細長いワークの内径にある交差穴のように、内部が見えにくい加工箇所でも、工具自体が視界を遮らないため、加工箇所を確認しながらバリ取りできる安心感があります。

したがって、弾性シャフトタイプは、「長い=扱いにくい」という従来の常識を覆した、長くても安定するという先端工具なのです。
弾性シャフトタイプの使いやすさについては、神経科学の観点から解説している記事もありますのでこちらもあわせてご覧下さい。
なお、弾性シャフトタイプはエアリューターでの使用はできません。
エアリューターは回転数の制御が難しく、予期せぬ高回転での使用によりシャフト部分が破損する恐れがあります。
使用する際はXEBECツール専用 ポータプル回転工具などの回転数を制御できる電動リューターに取り付け、推奨の回転数で使用して下さい。
孫の手は、背中のかゆみを取るための手の延長です。
弾性シャフトタイプもまた、工具の先端を届かないバリへ導くための延長です。
背中のかゆみがスッと取れるように、深穴の交差穴の中に残ったバリがスッと消える。
それが、弾性シャフトタイプをバリ取り界の孫の手と呼ぶことができる所以です。
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